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企業のDXが進む中、社内で利用するシステムやクラウドサービスは増え続けています。ERP、CRM、SFA、会計システム、人事システム、EC、BIツールなど、それぞれの業務に最適なシステムを導入することで、業務の効率化や高度化が期待できます。
一方で、新たな課題も生まれています。
「システムごとにデータが分散している」
「同じ情報を複数のシステムに入力している」
「必要なデータをすぐに取得できない」
こうした問題を解決するために重要になるのが、「データ統合基盤」です。
本記事では、データ統合基盤とは何か、なぜ企業に必要なのか、そして導入することでどのようなメリットが得られるのかをわかりやすく解説します。
目次
データ統合基盤とは?
データ統合基盤とは、企業内外に分散しているさまざまなシステムやサービスをつなぎ、データを連携・統合するための仕組みです。
たとえば、企業では次のようなシステムが利用されています。
- ERP(基幹システム)
- CRM/SFA
- 会計システム
- 人事・給与システム
- ECシステム
- データウェアハウス(DWH)
- BI・分析ツール
- 各種SaaS
これらのシステムが独立していると、必要な情報がそれぞれのシステム内に閉じ込められてしまいます。
そこでデータ統合基盤を介してシステム間を接続することで、必要なデータを適切なタイミングで連携できる環境を構築します。
つまりデータ統合基盤は、企業のさまざまなシステムをつなぐ「データのハブ」ともいえる存在です。
なぜ今、データ統合基盤が重要なのか
従来、企業システムは一つの大規模な基幹システムを中心として構築されるケースが多くありました。
しかし現在では、ERPだけですべての業務をカバーするのではなく、業務ごとに適したクラウドサービスやSaaSを組み合わせて利用する企業が増えています。
営業活動はSalesforce
基幹業務はSAP S/4HANA Cloud
ファイル管理はBOX
データ分析はBIツール
例えば、上記といったように、それぞれの業務に適したシステムを組み合わせて活用することが一般的になっています。中でも、SAP S/4HANA CloudとSalesforceを連携し、それぞれの強みを活かした経営基盤を構築する考え方は、企業の業務効率化やデータ活用を進める上で重要な選択肢の一つです。
各システムがそれぞれの領域で高い機能を発揮する一方、システムの数が増えるほど重要になるのが、「システム間でどのようにデータをつなぐか」という視点です。
個々のシステムが優れていても、データが分断されていては企業全体として十分に活用することができません。
そのため、複数のシステムを前提としたIT環境では、データ統合基盤が重要な役割を担います。
データが分断されると何が起こるのか
データ統合ができていない環境では、さまざまな問題が発生します。
1. 同じデータを何度も入力する
たとえばSalesforceで登録した顧客情報や受注情報を、SAPにも手作業で入力しているケースです。同じ情報を複数のシステムに入力することで、担当者の作業負荷が増えるだけでなく、入力ミスや更新漏れの原因にもなります。
2. システムごとにデータが異なる
あるシステムでは住所が更新されているのに、別のシステムでは古い住所のまま、といった状況が発生することがあります。「どのデータが正しいのか」が分からなくなると、業務だけでなく経営判断にも影響します。
3. データの集計に時間がかかる
経営レポートを作成するために複数のシステムからExcelやCSVを出力し、担当者が手作業で集計している企業も少なくありません。データの収集や加工に時間を費やしてしまうと、リアルタイムな状況把握が難しくなります。
4. AIを十分に活用できない
生成AIやAIエージェントの活用が進むにつれて、企業データの重要性はさらに高まっています。AIが高度な分析や判断を行うためには、必要なデータへ正しくアクセスできる環境が必要です。データが複数のシステムに分散し、形式や内容が統一されていなければ、AIを導入しても十分な効果を得ることは難しくなります。
データ統合基盤を導入するメリット
データ統合基盤を構築することで、企業はシステム間のデータをより効率的に活用できるようになります。
二重入力を削減できる
システム間でデータを自動連携すれば、同じ情報を何度も手入力する必要がなくなります。業務効率化だけでなく、入力ミスの削減やデータ品質の向上にもつながります。
データの一貫性を保ちやすくなる
「どのシステムの、どのデータを正とするのか」を明確にし、必要なシステムへ連携することで、企業全体で一貫性のあるデータを利用しやすくなります。
経営情報を迅速に把握できる
ERP、CRM、その他の業務システムに存在するデータを統合することで、経営に必要な情報を集約しやすくなります。データ収集に時間をかけるのではなく、分析や意思決定そのものに時間を使える環境を目指すことができます。
システム変更への柔軟性が高まる
システム同士を個別に直接接続していくと、システムが増えるほど連携構造が複雑になります。データ統合基盤を中心に連携を設計することで、新しいSaaSの導入や既存システムの変更にも対応しやすいアーキテクチャを構築できます。
実際に、データ統合基盤の整備によって、システム連携の開発効率や運用の柔軟性を高めた事例もあります。赤城乳業株式会社では、基幹システムの刷新にあわせてデータ連携基盤を構築し、約20本の連携フローを整備。従来は約3か月を要していた開発・改修を1〜2日程度で対応できるようになるなど、業務効率化を実現しています。
「システムをつなぐ」だけでは十分ではない
データ統合というと、「AシステムからBシステムへデータを送ること」と考えられがちです。しかし、本当に重要なのは接続そのものではありません。
考えるべきなのは、
どのシステムがどのデータを管理するのか。
どのタイミングでデータを連携するのか。
どのデータを企業として正しい情報とするのか。
という全体設計です。
例えば、SalesforceとSAPを連携する場合でも、単純にすべてのデータを双方向で同期すればよいわけではありません。
営業活動や顧客接点に関する情報はSalesforce、受注後の会計・購買・在庫などの基幹情報はSAP、といったように、それぞれのシステムの役割を明確にした上でデータ連携を設計することが重要です。こうしたSAPとSalesforceの連携によって得られるメリットや、連携時によくある課題については、別記事で詳しく解説しています。
データ統合基盤は、単なるシステム連携ツールではなく、企業全体のシステムアーキテクチャを支える基盤として考える必要があります。
データ統合はAI活用の土台にもなる
今後、データ統合基盤の重要性がさらに高まる理由の一つがAIです。
AIが企業活動の中で活用される範囲が広がれば、AIはCRM、ERP、文書管理システムなど、複数のシステムに存在する情報を参照する必要があります。
そのとき重要になるのが、「必要なデータが、必要な形で、利用できる状態になっているか」という点です。
AIツールを導入するだけでは、企業のデータ活用は完成しません。
AIを活用できる企業になるためには、その前提としてデータを整理し、システム間で連携できる環境を整備することが重要です。
その意味でも、データ統合基盤は今後の企業ITにおける重要なインフラの一つといえるでしょう。
まとめ:データ統合基盤は企業システムをつなぐ「土台」
クラウドやSaaSの普及によって、企業が利用するシステムは今後も増えていくと考えられます。
重要なのは、すべての業務を一つのシステムに集約することではありません。
それぞれの業務に適したシステムを活用しながら、データを企業全体でつなぎ、活用できる状態をつくることです。
データ統合基盤を整備することで、以下の効果が期待できます。
- システム間の二重入力を削減する
- データの一貫性を高める
- 経営情報を迅速に把握する
- 新しいSaaSやシステムを柔軟に追加する
- AIが企業データを活用できる環境を整える
SAP S/4HANA CloudやSalesforceをはじめとする複数のクラウドサービスを活用する時代だからこそ、個々のシステムだけではなく、それらをどのようにつなぎ、企業全体でデータを活用できる環境を構築するかという視点が、これまで以上に重要になっています。